卒業証書伝達式 式辞
桜の開花が聞こえる候となりました本日、明照学園樹徳中学校第22回卒業証書伝達式を挙行
いたしましたところ、公私ともご多用の中、明照学園理事長野口秀樹先生、明照学園樹徳中学校
後援会会長恩田良和様、茶道、華道でご教授いただきました野口宗幹先生、近藤理創先生のご臨
席をいただきこのように盛大に挙行できます事に関係者を代表して、厚く御礼申し上げます。あ
りがとうございます。
また、本日卒業を迎えた卒業生の皆さん、保護者の皆様本日は誠におめでとうございます。
皆さんは、世界史にも刻まれるであろうコロナ禍の時代を人生で最も多感な時期の中で過ごし
てきました。小学校では宿泊の伴う修学旅行が実施されなかったのだろうと思います。その様な
状況で中学に入ってからも影響が色濃く残りました。学級、学校閉鎖はあり、オンライン授業も
ありました。本来なら楽しく語らいながらできる学校での食事も話すことをしないで前を向いて
食べことを余儀なくされました。そのような生活から恐る恐る平常へと進んでいる中にもいまし
た。修学旅行も開校以来初めてという選択制で行ってきました。しかし、みんなの「明るく、正
しく、仲良く」という樹徳の精神で、乗り越えてきました。その様な3年間で、運動や勉学更には
体力、精神力、忍耐力において大きく成長してきました。とても頼もしく思います。
さて、私は今頃の季節になりますと麦畑の様子が気になります。皆さんの中にも通学途中で見
る人もいることと思います。今は地面にへばりついているような存在ですが、あと2ヶ月もする
と大きく育ち穂をつけるようになります。
この麦の中にライ麦という種類があります。このライ麦というのは寒いところで生育すること
ができ、地面が凍てつくような極寒の北ヨーロッパなどでも育つために多く栽培されている逞し
い麦であります。五木寛之さんが書いた「生きるヒント」という本によりますと、アメリカのア
イオワ州の大学で、木で作った箱にライ麦一粒を撒き、ライ麦が実るまで育てました。そこで土
をきれいに振り落とし、根がどれだけ広げているか顕微鏡で見なければ見えないような細い根ま
での長さを計り、全て調べてみたそうです。
そしてその合計を計算した所、何と11200Kmになったそうです。この長さを地球規模で例
えてみますと、地球の北極から赤道までの距離が10000Kmでありますから、この長さを越え
るわけです。たった一粒からこんなに伸びたのです。
考えてみますと根は根のために伸びることが目的でなく、葉や茎や実を作ることのためにぐん
ぐん伸びている、他のために全てを尽くして伸び続けていたのです。
私たち樹徳の教えの「誰かの何かの役に立てる人になる」という精神に似ていることを感じま
す。
樹徳中学校の校歌に「夢は大きく根は深く」という歌い出しの部分がありますが、大きな夢の実
現には想像のできないほどの根の深さ、すなわち努力が必要であることを教えてくれると同時に
、校歌は誰かの何かの役に立とうという精神も教えてくれているような気もいたします。
さらに、校歌は「天地の音に心澄まし、真理の響きいざ聞かん」ということも言っています。
天地の音を聞くということは、世界中の人々の困っていることや、悩んでいること、苦しんで
いることに目を向け真剣に考え、自分で何ができるかを考え行動することだと思います。
山田進太郎さんという人は世界中の旅をしました。天地の音に心澄ましたのです。地球資源が
限られている中で、より豊かな社会をつくるために自分で何ができるかを考えて、できたのがメ
ルカリです。メルカリはテクノロジーの力で世界中の人々をつなぎ合わせて、あらゆる人の可能
性が発揮される世界の実現を目指しています。
ある人にとっては不用でゴミのような存在でも、別の人にとっては必要で探し求めている物も
多いのです。
メルカリが存在しないとこのような物は全てゴミとして処分されてしまい、別の場所では大切
な資源を使って同じ物が作られるわけです。この無駄を回避できるシステムがメルカリであるこ
とは皆さんよく知っていますね。こんなことを考え出し、実現していることは素晴らしいことで
あると思います。
現代の社会の中で、グローバルに展開している企業は皆、自分たちの利益だけでなくて世界の
人たちのためを掲げて展開しています。このように世界の人々のため、後の世の人々のためを考
え、行動できる人間になるには、ただ単に机上の勉強ができれば良いというわけではありません
。
卒業生の皆さんは入学以来、毎朝10分間の読書をしたり、合掌をして世界の人々の安寧を祈
ったりしてきました、樹妙を読んで先人の教えを学んできました。これらの全ては樹徳でなくて
は出来ない貴重な経験です。そしてそれは、天地の音を聞くためになくてはならない力であり、
さらには時代のリーダーになくてはならない力であると確信しています。
それは、メルカリの創始者であります山田進太郎さんは私たちと同じ浄土宗の宗立宗門校の卒
業生であり、同じ経験をしてきた人であることからも証明されています。
皆さんは更に高校へ進みこの力に磨きをかけ、自信を持って世界に羽ばたいていただきたいと
思います。
結びに、この素晴らしい校歌を歌うのは今日が最後ではなく、これからも様々なところで、み
んなで、大きな声で歌ってくれることを期待して式辞といたします。
令和7年3月21日
明照学園 樹徳中学校 校長 辻村好一